或る「小倉日記」伝 (松本 清張)

或る「小倉日記」伝
 作家:松本 清張
 発行年:1965
 出版社:新潮社
 読み終えた日:2007/04/09
 スター:★★★★★
恥ずかしながら、松本清張というと、テレビドラマのイメージもあって「推理小説作家」という認識でした(テレビは一度も見てませんが・・・)。そういう認識もあって、これまで、松本清張の本を全く読まないできておりました。今回、初めて、松本清張の本に触れ、これまで読んでこなかった事を、反省しなくてはいけないと思ってしまった程でした。


本作品は、「小倉日記」に代表される松本清張の短編集となっておりますが、全部で12作品が掲載されています。全ての作品について、共通しているのは、人間の負の部分の本質について深い洞察がある点、及び、社会風刺、批判的な内容となっている点だと思います。
この「小倉日記」は第28回(昭和27年)芥川賞受賞作品となっており、松本清張の出世作になります。本作品は身体的なハンディを背負った青年が、人生を掛けて森鴎外が小倉に滞在した間の記録を追うドキュメンタリーのような内容になっています。
身体的なハンディを背負い、一見すると知的障害者のように見える青年が、社会から差別的な対応を受けながらも自分で設定したテーマに向けて前へ進んでいく物語となっています。
この小説の主人公はモデルとなった実在の人物がいるようです。当時、松本清張も小説家としての自身のプライド、才能を信じつつも、世間から評価されない期間が長く続いており、やや屈折した思いをこのモデル人物に投影したのではないかと思います。
それにしても、本文庫に掲載されている作品全てについて、入念な取材、構成立てがされています。この後、ミステリー作家として世間に広く知れ渡っていく松本清張作品の真髄が垣間見える初中期の作品となっております。
素晴らしい一冊です。

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