Category Archives: アグリプロマネ

2.2. 作業予定表の作成と作業記録

第二章 実践!管理表の書き方、活用法

< <前節 2.1. 初めてみよう!たった5つの管理表

2.2.1.農作業予定と実績表

本節から実際のファイルの記述方法について解説していく。まずは、最も基礎的で重要となる作業管理表からになるが、作業管理は農作業予定と実績(日記)を記帳していくものだ。

図2.1.1.にあるように、作業管理のフォルダには年度別に分けた「農作業計画&実績_YYYY」(YYYYには年度が入る)というファイルで構成されている。当農園の場合、2013年10月から記述をスタートし、その時から6年間、毎日、記述を続けているので、どういう時期にどういう作業をやるのか、一つ一つの作業がどの程度の時間で出来るのか、作業の課題や解決方法などの記録が残されている。

図2.2.1.作業管理表画面例

図2.2.1.作業管理表画面例


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2.1. 初めてみよう!たった5つの管理表

第二章 実践!管理表の書き方、活用法

< <前節 1.3.ウーダ(OODA)ループ

どんぐり農園が効率的な農業経営の為に作成している主要な管理表は以下の5つ。

# 名称 内容 更新頻度
A 作業管理表 日々の作業計画・実績、日記(感想)などを記録 毎日
B 圃場管理表 作付計画、施肥、農薬など、農作業の全ての基礎となる管理表、年次、作物ごとに作成 作付計画段階で作成し、都度更新
C 販売管理表 日々の出荷数量、販売金額データを記録した管理表。商品毎、月毎の販売成績をデータ化 出荷・販売がある日
D 人材管理表 シフト管理、勤務実績、給料計算などの管理表 週一程度
E 事業計画表 現状を分析し、今後の事業計画を立案したもの 4半期毎
表2.1.1. 主要5大管理表

これらをOODAに当てはめてみると図2.1.1.のようになる。

図2.1.1.管理票とOODAの対照表

図2.1.1.管理票とOODAの対照表


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1.3.ウーダ(OODA)ループ

第一章 今こそ求められるアグリプロジェクトマネジメント

< <前節 1.2. 段取り八分の「アグリプロジェクトマネジメント」

プロジェクトマネジメントでは計画を立て、実行し、改善していく事が基本になる。いわゆるPDCAサイクルと呼ばれるものだが、農業(特に、露地園芸)の現場では詳細な計画を立てる事に対して、以下のように否定的な意見が挙げられる事が多い。

  • 天候の影響が大きく、計画通りの実行は難しく、状況を見ながら柔軟に対応せざるを得ない
  • 長年の経験が頭に入っているので、細かく計画を立てなくても問題なく栽培出来る
  • 農業生産は工業生産のようにはいかない

確かに、せっかく立てた計画も、台風が来てしまえば、大きく変更を余儀なくされるし、天候や気温の変化、降雨量、日照量などは10日程度先までの予測が限界で、一ヶ月先の作業を計画通りに実行する事などほとんど不可能と言える。つまり、毎日、作物を良く観察し、作物の状況とこの先の天候を考慮して、その日の作業内容を決めていくべきで、詳細な計画を立てるべきではないというのも一理あると思う。

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1.2. 段取り八分の「アグリプロジェクトマネジメント」

第一章 今こそ求められるアグリプロジェクトマネジメント

< <前節 1.1. なぜ、新規参入者がうまくいかないのか

私が農業を始めるかどうかを検討している際、静岡県の支援プログラムなどを利用して、県内の優良な農家を回って見学させてもらった事がある。また、大勢で見学するだけではなく、見学後に別途連絡させて頂き、個別に訪問し、直接詳しい話しを聞かせて頂いた事もある。幾人かの優良な農家の話を聞かせて頂いているうちに、以下2つの重要な共通点がある事に気がついた。

【共通点1】農作業日記を書いている

【共通点2】段取りが頭にしっかり入っている

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1.1. なぜ、新規参入者がうまくいかないのか

第一章 今こそ求められるアグリプロジェクトマネジメント

< <前節 0.はじめに:アグリプロジェクトマネジメントのすゝめ

 新規就農者がうまくいっているケースは多くなく、就農実態調査の所得状況の調査(図1-1)によると、新規参入者で300万円以上の所得を得ているのは、わずか9.8%にとどまっている。特に、露地野菜の所得が最も低く、平均で72万円、300万円以上はたったの5%となっており、かなり厳しい状況であるという事が分かっている。

就農実態調査所得調査

就農実態調査所得調査

図1-1 出典:新規就農者の就農実態に関する調査結果-平成 28 年度-

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0.はじめに:アグリプロジェクトマネジメントのすゝめ

第一章 今こそ求められるアグリプロジェクトマネジメント

 静岡で新規就農して5年、研修を含めると6年が経過した。そろそろ、ITを活用した農業の話を書いていこうかなと思っている。現在、生産している作物はレタスを中心として、トルコキキョウ、キャベツ、ズッキーニ、とうもろこし、水稲という複合経営を行っており、売上としては2000万円を越えてきた辺りだ。
 農業機械やハウスなどへの先行投資がある為、利益(所得)としては300万円程度と利益率としては良い数字ではなく、少し無理して規模感を出すようにしているので、経営的な評価は分かれるところではあるだろう。しかし、「新規就農者の就農実態に関する調査結果-平成 28 年度-(以下、「就農実態調査」)」によると、新規就農者(就農10年以内)の75.5%が「生計が成り立っていない」という調査結果があるように、ゼロから新規就農して経営を乗り立たせる事が非常に難しいという事実を考慮すれば、5年にしてはそこそこの規模感で、複合経営の土台が出来始めているという点は多少評価してもいいのではないかと思う。
 もちろん、頑張って仕事をしているという事ではあるのだが、それだけではなく、ITを活用して生産の最適化を行っている事が大きく寄与している。これはITの業界で使われるプロジェクト管理という概念を導入している事に加え、研修から含めて6年間、毎日、各種データを蓄積、分析しつづけてきた事で、農作業などに関して様々なナレッジ化が進みつつあり、精度を高めたプロジェクト管理が出来初めてきている。
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