中国オフショア開発のリスク

 中国各地で反日に関するデモを初めとする事件がおきているようです。上海ではそんな雰囲気は特に感じないですし、知り合いの中国人達も、知らない人が殆どなようで、何の変わりもなく過ぎています。中国では報道規制がある為か、そういうセンシティブな話題をニュースで取り上げる事はないようです。
 ただ、こういった事件があると、日本のメディアは殊更に取り上げ、中国が非常に危険な国であるかのようなイメージを作り上げます。確かに、反日感情というのはある所には根強くあり、全く存在しないという事はありませんので、リスクはあるかと思います。
 しかしながら、そのリスクというのは私が知る限りでは限定的なものであると思います。また、中国のビジネスマンたちはそれよりも実利を求める傾向にある事は言うまでもありませんし、国としても、最大の投資元である日本からの投資が冷え込むと、景気に直結しますので、ある程度はコントロールされていくと考えるのがリーズナブルだと思います。


 こういったカントリーリスクを始めとして、中国でオフショア開発をしていくにはリスクが伴います。どういう形態で展開するかによりますが、反日感情以外に、以下のようなリスクがあるのではないでしょうか。

 1)国家政策の転換
 2)為替リスク
 3)人材の確保
 4)コミュニケーション不足
 5)ビジネスカルチャーの違い

 1)国家政策の転換
 中国の場合、突如として、ルールが変わる、もしくは、何かが始まる、終わる事があります。政府としては熟慮の上と思われますが、一方的な通達が突然やってきます。その結果として、予定していた事が出来なくなったりする可能性はあります。但し、このような変更は飽くまで、国内向けの話であり、WTO加盟の結果、海外との取引に関しては、規定のルールに沿って進めていくものと思われます。この路線に変更が加えられるとしたら、中国としても、非常に良くない結果に繋がりますので、極力避けると思われます。
 2)為替リスク
 近年来、元の切り上げ問題がフォーカスされております。切り上げが起こった場合、輸出の際の販売価格が上昇する結果に繋がり、コストダウンを求めて、オフショア開発を行ったにも関わらず、思ったよりコスト削減に繋がらない可能性があります。しかしながら、元の切り上げを急速に行うとは考えられず、段階を踏みながら年間数%のレンジで切り上げていくとの見方が強く、緩やかなランディングを行うと思います。と言いますのも、元の切り上げ速度が速すぎる場合、投機的な資金が急速に引く可能性があり、国内景気を冷え込ませる可能性がある為、中国国家として、それを行う事は有り得ないとの理由です。
 
 3)人材の確保
 ローコストでよい人材を集める事は一つの課題です。しかしながら、2003年における中国のITエンジニアの数は27万人であり、国内市場の伸び、輸出の伸びを見る限りではエンジニアの数が圧倒的に不足していると思います。
 また、インド程、ITの歴史が長いわけではないので、ハイレベルな人材となると非常に難しく、取り合いが発生しているというのが現実です。
 もっとも、人材の確保に苦労するのは、自社でオフショア開発センターを設置する場合で、外注先の一つとして捉えた場合は、問題にならないと思います。
 4)コミュニケーション
 コミュニケーションについては何度も書いてますので、ここでは割愛します。
 5)ビジネスカルチャーの違い
 中国国内にオフショア開発センターを設置したり、中国企業との提携を行う場合、恐らく、ビジネスカルチャーの違いに苦労すると思います。特にオフショア開発センターを設置した場合、社内カルチャーにも苦労する為、外と内、両方で苦戦します。
 但し、上海や大連には日系企業も多く進出しており、このような日系企業との提携、もしくは、中国企業の間に入る事を専門としているブリッジSE系のコンサル会社であれば、この辺りの違いを吸収する事が可能です。
 この他にもリスクがあるかも知れませんが、今、現場で感じているのはこのぐらいです。ある程度、コストダウンを狙っていく場合、リスクはあると思います。問題は、リスクをコントロール出来るかどうかであり、ダウンサイドを正確に見極めた上で、コストメリットを得て行くべきだと思います。

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