山の郵便配達という映画を見ました。原題は「那山 那人 那狗 (あの山、あの人、あの犬) 」で、1999年に中国で公開、2001年には日本でも公開された映画です。
80年代の中国山間部を舞台にしています。年老い、足の病気の為、引退する事になった郵便配達員が、後を継ぐ息子と共に配達に行き、道中(2泊3日)での様々な人間模様が描かれています。
人間模様の描写も素晴らしいものがありますが、卓越した映像美もこの映画を特別な存在にしていると思います。
中国伝統の山水画を現代的に映像という形で伝えてきているように思えます。どうやったらここまで美しい映像を描けるのか、この透き通る美しい映像を見る為だけにこの映画を見ても価値があると思います。
この映画には、電線やコンクリートなどが殆ど出てこない。山道の横で、一箇所、バスが通る場面があり、そこで出てくるのみである。なぜ、バスを使わないのかという息子の問いに対し、父は諭すような回答を出してくれます。これは、この映画を見ている人全てに対して、考えるべき回答のように思える。
それにしても、中国の山村部と言えど開発は進んでおり、「緑を美しくとるのにたいへん苦労した」と監督はインタビューに答えているようです。
山の映像だけではなく、その人間の配置の仕方にも非常に工夫があり、全てのシーン毎に芸術を見せられているように思います。
日本人にも見てもらいたいですが、現代の中国人がまず見なければいけない映画だと思います。