山行日時:2014年8月2日(土)-8月4日(月)
[ルート] ルート概略はこちら
(1日目)8時間40分
沼平(7:30)-茶臼岳登山口(8:00)-横窪沢小屋(11:40-50)-茶臼小屋(14:25-15:15)-茶臼岳(15:45-15:50)-茶臼小屋(16:10)
(2日目)13時間10分
茶臼小屋(4:30)-上河内岳(5:55-6:00)-聖平小屋(7:30-8:00)-聖岳(10:00)-奥聖岳(10:20-25)-聖平小屋(12:00-13:00)-椹島(17:40)
(3日目)4時間
椹島(5:30)-沼平(9:30)
[感想]
南アルプス最南の3000m峰である聖岳。南アの魅力は何と言っても、その自然である。森林限界の岩稜帯に入ってなお、低木や花を見ることが出来る。上河内から聖平小屋までの間や、聖岳から奥聖の3000mの稜線にも見られる高山植物は南アの奥深さを味わえる場所だ。
今回のルートは、畑薙第一ダムから茶臼に上がり、上河内を経て、聖へとアプローチするポピュラーなルートだ。2日目は聖平小屋泊というのが一般的だが、強行して椹島まで降りた。天候が下り坂であったというのもあるが、椹島には生ビールと日本酒、そして、お風呂があるなど、2日間の縦走で疲れきった体には魅力的なキャンプ場なので無理しても行きたくなる。
本ルート上に目立って危険な箇所は無い。全体にきっちりと保全されているので、特に必要な技術は無く、体力さえあれば、問題なく登頂出来る。体力についても、小屋を使うという選択肢を取るのであれば、体力的にもかなりセーブ出来るので、体力の劣る方でもアプローチ出来るルートだと思う。
[駐車場&畑薙第一ダムまでのアプローチ]
1.茶臼岳登山口から茶臼小屋、茶臼岳
ルートマップ:①
本ルートの中では登山口から茶臼小屋までの登り、それも横窪沢小屋までの序盤の急登が最もきつい。急登で崩れやすい斜面だが、危険な箇所にははしごが掛かっているので、注意して登れば、歩行上の危険は少ない。
展望は特に無く、樹林帯を地味に上げていく南アの典型的なルートなのだが、途中途中にある可愛くて、面白い案内板が登りに苦しむ登山者を応援してくれる。茶臼小屋か横窪沢小屋の方が作られていると思うのだが、登山者に寄り添った優しさを感じる。
ルート上の横窪沢小屋は到着すると、ちょっとした休憩でもお茶を出してくれて驚く。この時期、多くの登山者が訪れて、忙しい時期だと思うのだが、このような心配りは地味な登りで疲れた時には力になる。
茶臼小屋の入口はきれいに整頓されており、ソフトドリンクを初め、ワインや焼酎なども置いてある。ビールは「越冬ビール」が350mlを2本で500円という破格値で売られており、お酒好きには堪らない。テン場は大きさがあるので、詰めて張れば20張以上はいけそうだ。富士山側に展望が開けており、日の入、日の出の富士山の絶景を楽しむ事が出来る。
茶臼小屋から茶臼岳までは往復で1時間も掛からないので、荷物を置いて、アプローチすれば手軽に往復する事が出来る。翌日、光岳に向かう場合は、通過するので問題ないが、上河内、聖に向かう場合には、この日のうちに登っておいた方が良いと思う。
2.茶臼小屋から上河内岳を経て、聖平小屋
ルートマップ:②
茶臼小屋から15分程度で稜線に出て、上河内から聖へと続く四方が開けた縦走路に入る。ちょうど、夜から朝に掛けて降っていた雨が止んだおかけげで、縦走路に入ってまもなく、西側に虹を見ることが出来た。様々な条件が整った時だけに見る事が出来る見事な虹だった。
緩やかなアップダウンが続く縦走路をしばらく歩くと、草原と呼ばれる正面に上河内岳を望むコルのような場所に出る。ここからの上河内はとても美しい。しかし、草原と呼ばれるこの場所も、かつてはお花畑であった。シカの被害、人間の採取などにより草原化してしまったようだ。お花畑の復元に向けた努力がなされているようなので、いつか、お花畑から上河内を望める日が来るのを期待したい。
上河内岳は縦走路から少し上がったところにある。それなりに厳しい登りになるので、パスされる事もあるようだが、晴れた日の展望は非常に良いので、登り口に荷物をデボして、ぜひ、登って欲しい山だ。上河内岳から聖平小屋までの縦走路はお花が最も見られるところだ。森林限界前後の高度でのお花畑は南アルプスの醍醐味でもある。
聖平小屋は標高2300m付近で、縦走時にはパスしてもいいかも知れないが、縦走路からは5分程度なので、余裕があれば休憩がてらに寄ってみるといいし、荷物のデポにもいいと思う。展望がある小屋ではないが、テン場も綺麗で、小屋の方も親切で感じがいい。
3.聖平小屋から聖岳へ
ルートマップ:③
茶臼小屋から上河内岳まで400mの登り、その後、500mを下って聖平小屋となる。聖岳には、ここから再度、700mを登る事となり、縦走用の重めの荷物ではなかなかきつい。この為、聖平小屋のテン場に荷物をデポさせてもらったが、聖光小屋からのルートとの分岐になる薊畑分岐(あざみばた)にデポする人も非常に多かった。
小屋から薊畑分岐までは、比較的、緩やかな登りとなるが、ここを過ぎると、少し急な登りとなってくる。しばらく樹林帯を登ると、ルート唯一の岩場を越えてすぐの辺りで森林限界に出る。急激に気温が下がるので、ここでジャケットを着る。トレランやっている人などはTシャツだったりするのだけど、個人的には保温はしっかりした方がいいと思う。山で体温が下がるのは危険だと思う。
森林限界に入ってからは緩やな登りを少し進んだところに小聖岳があるが、看板の文字がかすれて読み取れない。。。小聖を抜けてからもしばらく縦走のようななだらかな道のりを進んでいくのだが、山頂手前の最後の最後に急登のガレ場が出てくる。九十九折に黙々と登って行くが、これが本当にきつくて、最後の正念場となる。山頂はすぐそこに見えているのだが、なかなか着かない。この苦しみを乗り越えて、何とか聖岳に辿り着く。しかし、本日は残念ながら、霧が掛かっていて、展望は得られなかった。この後、奥聖まで20分程度の縦走を行う。3000m級の縦走でありながら、高原植物があって花が咲いているので、霧が出て高度感が無い事も相まって、非常に不思議な感覚を覚える。南アルプスの自然の奥深さを感じる場所の一つだ。
4.聖平小屋から椹島
ルートマップ:④〜⑤
山頂から、そそくさと聖平小屋まで下山する。ここで泊まろうと思っていたのだが、天候も下り気味だし、まだ、お昼の12時という事で、昼食休憩を取った後、下山する事にした。距離はあるのだが、比較的緩やかな樹林帯で、老若男女が歩ける快適なハイキングコースだと思う。
4時間程度で登山口まで歩けるが、椹島までは更に40-50分の林道歩きがある。あまり面白い道ではないのだが、やむを得ないので、気分を変えて、歌でも歌いながら歩く。
苦痛の林道歩きに耐えて、辿り着く椹島は最高である。天国である。大浴場(キャンプ利用者も無料で使える)があり、生ビールがあり、日本酒が置いてある。トイレもきれい。調理場もある。無理して降りて来た甲斐がある。最終日にここに寄るのが最高だなと思う。
ちなみに、ロッジに宿泊すると、畑薙第一ダムから椹島までのバスに乗れるのだが、テント泊の自分は乗車出来ない・・・ので、翌朝は休憩含めての約4時間の林道歩き。椹島に寄れるというメリットがあるが、茶臼登山口から上がるなら、茶臼小屋に荷物をデポして、2日目も茶臼小屋に泊まるというのもありだなーと思った次第。