火宅の人(檀 一雄)

 ここ数年、忙しさの為か極端に読書量が減っていました。年末ぐらいから本を読み始め、mixiに書評を書いてましたが、折角なので、こちらにも転記していこうと思います。
 タイトル:火宅の人
 作家:檀 一雄
 発行年:1975
 出版社:新潮社
 読み終えた日:2006/10/22
 スター:★★★★★
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 火宅の人 (上巻)
 火宅の人 (下巻)


 久々に衝撃を受けた小説。作家「檀一雄」の集大成と言える本です。
 いわゆる私小説の形態をとっておりますが、彼は私小説が嫌いだったようで、私小説に対する復讐だとも言っているらしいです。私小説と言えば、志賀直哉が有名で、個人的には「暗夜行路」が好きな一冊になっています。暗夜行路は父との和解がテーマにあり、火宅の人は「愛」とか「人間の本質」というものがテーマにあるようです。テーマはそれぞれですが、両作品とも「人生」とは何なのか、「人」とは何なのかというところを突き詰めようとしており、非常に感銘を受けます。
 この小説は、20年も掛けて書き繋いだもので、やや唐突な部分があることは否めませんが、全体としては非常に芸術的で、美しい仕上がりをしていると思います。この小説が評される時「どこまでが真実なのか?」や「この主人公に対する賛否」がよく言われますが、本質論から程遠く、殆ど無意味かと思います。
 何かを失う事を前提とし、それを認識、覚悟してなお、突き進める自己の開放、発散。その先に見える何かを求めているのか、本能が進めているのかは分かりません。更にはそれを私小説という形で世に問うていく様が、この人が稀有な芸術的小説家であるという事を証明しています。

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