リツ子・その愛(檀一雄)

リツ子・その愛
 作者:檀一雄
 発行年:1950
 出版社:新潮社
 読み終えた日:2007/08/28
 スター:★★★★☆
終戦の一年前、昭和19年に従軍記者として檀一雄が中国・洛陽に渡る所から話は始まる。戦争末期、幼子(太郎)が生まれたばかりの状況で妻と子供を置いて、一年もの間、従軍するところは凄まじい。


一年を経過し、戻ってきた檀一雄の前にあったのは、妻の病気と貧困であった。彼の小説に一貫してあるテーマである「人間の弱さ」や「抗えないさが」がこの小説にも出てくる。
妻を愛し、病気を看病しつつも、回復した後は、妻子を捨てて、どこかへ旅立ってしまうかも知れないと思ってしまう。こういったところは人間の本質部分かと思う。
普通の人間であれば、「倫理」「社会」などブレーキが掛かる。しかし、そこを文章化し、芸術として残すところに無頓派と呼ばれた作家の真髄があるかと思う。
戦後直後、愛妻を失った直後に、極貧の最中に、幼子を一人で育てつつこの作品を創った作家の業の凄まじさを感じます。

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