2014年1月19日、静岡地酒が呑める日本酒Bar「狸の穴」のウォーキングクラブで、志太泉の蔵見学に行ってきた。志太泉は藤枝市瀬戸谷にある、明治15年に開かれた蔵で、130年を超える歴史がある静岡では古い蔵の一つだ。今回は、ただののんべぇの集まりではなく、ウォーキングクラブなので、藤枝駅から約8kmの道程を歩いて蔵に向かった。藤枝駅に9:30集合で、途中までは車通りを歩き、途中からは瀬戸川沿いを歩いていく。幸い、天候に恵まれたので、快調に歩き、約2時間ほど、11時半少し回った辺りでの到着となった。
志太泉蔵の横を流れる瀬戸川
歴史を感じる佇まいの外見の蔵の中で待っていてくれたのは望月社長自身だった。我々が到着すると、まずは、お茶を振る舞ってくれた。無料の蔵見学で押し掛けてきたにも関わらず、歩いてきた労をねぎらう言葉を掛けるその人柄に感銘を覚える。
樽
まずは、日本酒の「血」とも言える仕込みの水を汲み上げる瀬戸川について説明してくれた。日本酒に適した水がある事が何よりも重要だという事だ。その後、洗米や発酵など、丁寧な説明をお伺いしつつ、こちらの都合で限られた時間であったが、蔵の中を見させて頂いた。発酵樽では、仕込まれたとても良いお酒の香が漂っていて、非常に幸せな気持ちになる。
現在の志太泉の杜氏は能登杜氏「西原光志」氏で、年は若く、40歳前後だと聞く。現磯自慢の杜氏で、過去、志太泉でも杜氏をしていた「多田信夫」氏のように、志太泉の杜氏は、これまで、南部杜氏で酒造りをしてきた(更に前は志太杜氏の時代もあったようだ)のだが、平成21年から能登杜氏の西原氏となっている。西原氏は若手の能登杜氏の中では大変注目されている人物で、喜楽長の「天保正一」氏の元で修行し、能登杜氏となった。その後、藤枝市岡部にある初亀に入って、「滝上秀三」氏の最後の酒造りを手伝い、引き継いで、少しの間だけだが、初亀の杜氏となった。
杜氏
蔵の努力、西原氏の尽力もあって、近年評価が高まってきている志太泉であるが、この蔵が特に評価を受けているのが「普通酒」であり、昨年(平成24年)の「能登杜氏自醸清酒品評会 普通酒の部」で1位に輝いている。もちろん、各種吟醸も美味しいのだが、廉価な普通酒であっても手間を掛けた製法で作っている姿勢に感銘を覚える。採算を度外視しているという事はないだろうが、蔵の伝統と現社長の思い、作り手である杜氏の方向性が一致して初めて出来る事だろうと思われる。
近年、市場で評価される酒は、「超辛口」「すっきり」「フルーティー」である。単体で、一杯だけ呑むならそれもいいと思うが、毎日、食卓に上がり、食しながら呑むお酒としては、料理に負けず、融和するお酒である必要があると思う。また、何を食べるかに合わせて、呑む酒が選ばれる事も必要だと思う。
さて、見学後は、試飲させてもらい、酔いが回った事もあって、コミュニティバスで藤枝駅まで戻った。志太泉のすぐ近くにバス停があって大変便利だ(地方なので、本数はかなり少ないが・・・)。藤枝駅で予め予約していた「かわかつ」でランチを頂きながら、更に日本酒を頂く。
蕎麦 かわかつ
このかわかつさんは蕎麦のレベルが高いと言われる志太地区においてなお、抜きん出ている美味しいお蕎麦と、しゃも料理が楽しめるお店だ。日本酒も杉錦、志太泉を中心に置いてあって、「静岡DEはしご酒 in 藤枝」でのイベントにも参加していた。前回のはしご酒の時には、杉錦6代目当主の「杉井均乃介」さんが居た事もあり、杉錦推しのようだ。均乃介さんは社長兼杜氏で、山廃にこだわる個性ある方なので、今度はこちらにも蔵見学に行ってみたいと思う。