0.はじめに:アグリプロジェクトマネジメントのすゝめ

第一章 今こそ求められるアグリプロジェクトマネジメント

 静岡で新規就農して5年、研修を含めると6年が経過した。そろそろ、ITを活用した農業の話を書いていこうかなと思っている。現在、生産している作物はレタスを中心として、トルコキキョウ、キャベツ、ズッキーニ、とうもろこし、水稲という複合経営を行っており、売上としては2000万円を越えてきた辺りだ。
 農業機械やハウスなどへの先行投資がある為、利益(所得)としては300万円程度と利益率としては良い数字ではなく、少し無理して規模感を出すようにしているので、経営的な評価は分かれるところではあるだろう。しかし、「新規就農者の就農実態に関する調査結果-平成 28 年度-(以下、「就農実態調査」)」によると、新規就農者(就農10年以内)の75.5%が「生計が成り立っていない」という調査結果があるように、ゼロから新規就農して経営を乗り立たせる事が非常に難しいという事実を考慮すれば、5年にしてはそこそこの規模感で、複合経営の土台が出来始めているという点は多少評価してもいいのではないかと思う。
 もちろん、頑張って仕事をしているという事ではあるのだが、それだけではなく、ITを活用して生産の最適化を行っている事が大きく寄与している。これはITの業界で使われるプロジェクト管理という概念を導入している事に加え、研修から含めて6年間、毎日、各種データを蓄積、分析しつづけてきた事で、農作業などに関して様々なナレッジ化が進みつつあり、精度を高めたプロジェクト管理が出来初めてきている。

 ITと農業と言うと、ここ数年、スマートアグリという概念が流行っていて、農業関係者ならば耳にしたことがある言葉だ。スマートアグリというのは、ICT/IoT、ドローンなどのような最先端の技術を農業に活用して、農業の生産性を上げていこうという概念で、実際に導入が進み始めており、効果も実証されつつある。しかしながら、図0-1のような栽培環境そのものをコントロールしやすい施設型農業での活用が多く、私がやっているような小中規模の露地型農業では少し導入が難しい面があるのではないかと思う。

農業分類

農業分類

図0-1

 大規模農業であったり、施設園芸のような環境をコントロール出来る農業においてはスマートアグリの導入が効果的であるが、規模感が不足していたり、露地園芸のように環境に依存する農業においては、もう少しローコストで導入出来るIT技術の方が効果的であると考える。スマートアグリには手が出ないが、規模は拡大したいと考えている中小規模の農家に対して、ITを活用した農作業を管理し、生産効率をあげていくアグリプロジェクトマネージメント(APM)の導入を紹介したいと考えている。

次節>> 1.1. なぜ、新規参入者がうまくいかないのか

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