今年(2019年)のお米の出穂は、品種によっては、例年よりも少し遅れており、7月の低温・日照不足の影響を受けていると考えている。8月に入り、気温上昇、天候は安定しているので、登熟で追いついてくる可能性はあるが、現時点では、例年よりも、数日程度、遅れての稲刈になる事が想定される。
当地域(静岡県吉田町)では、5月20日頃から6月10日ぐらいまでが田植のピークになっていて、野菜の春作を行った田んぼになどよっては少し遅めとなる事がある。また、お茶農家の場合だと、一番茶よりも前に早めの田植えを行って農家もあるそうだ。当農園でも5/26〜6/8を中心として、とうもろこし、ズッキーニ後の田んぼを6/19に田植えを行った。
品種としては、「あきたこまち(極早生)」「キヌヒカリ(早生)」「コシヒカリ(早生)」「きぬむすめ(中生)」の4種としている。複数の品種を生産している意味合いとしては、食味の違いを楽しむ為という事もあるが、品種によって、出穂・登熟までの積算温度が異なっているという成長速度の違いをうまく利用して、作業の平準化を行ったり、乾きやすい田んぼでは早生、乾かない田んぼでは中生を植えるなど、田んぼ特性に合った作付けを行っている。
直近3年の田植日と出穂日を以下の表にいくつかピックアップした。ちなみに、出穂の定義は私が見て、7-8割出てるなーと思った段階を出穂としているので、私個人の能力による誤差がある事はご理解頂きたい。
❏ 田植日と出穂日データ(どんぐり農園調べ)
5/26->7/30
5/27->7/31
5/28->8/8
6/4->8/13
6/8->8/16
5/27->8/3
6/4->8/7
6/7->8/9
5/28->8/2
6/6->8/6
6/9->8/12
5/31->8/10
5/31->8/4
6/25->8/21
5/29->8/18
6/3->8/19
6/5->8/21
6/4->8/22
6/4->8/20
キヌヒカリとコシヒカリの出穂が過去2年と比較すると、5-6日程度の遅れとなっている。一方で、あきたこまち、きぬむすめの出穂は例年通りとなっている。あきたこまちについては異なる2つの圃場で、きぬむすめは8圃場でデータを取得しているので、圃場によるデータの影響は少なく、品種特性として、例年通りの出穂日という事と判断出来る。気温の影響を受けにくい品種と受けやすい品種があるのかも知れない。
さて、ここで当農園が指標としている積算温度の取得方法について説明しておきたい。積算温度の正しい取得の仕方としては、圃場に温度センサーを取り付けるという方法が、今どきのIoTという感じなのだが、コストも掛かるし、正確な温度を必要としているわけでもないので、簡易な方法を使っている。当農園の考え方としては、積算温度は目安レベルで良く、過去の栽培統計データと組み合わせて栽培管理に活用するようにしている。
そのような考え方の為、積算温度はインターネットの天気サイトで吉田町の天気を検索して得られるデータを利用するようにしている。サイトによって、若干、数値が異なっている為、一貫して同じサイトを使うことが重要であるが、多少誤差があっても大きな影響はないので、そこそこのデータで十分である。恐らく、もっとも正確そうな値は気象庁のホームページであるが、見にくい事この上ないので、ここ数年はThe Weather Channelを使っている。IBMのワトソンというAIを使った天気予報の精度が非常に高く、私の中ではもっとも信頼性が高いサイトの一つとなっている。つまり、以下のページから取得している。
❏ 年度別月間積算温度データ(どんぐり農園調べ)
上記サイトから取得し、算出した本年含めた過去5年の積算温度は上記の通りである。これを見ると、2017/2018の7月は高温で、2015/16は平年並、本年は低温であった事が分かる。もちろん、当園で取得しているデータだけではなく、気象庁の静岡県の観測データを見ても、同様のトレンドである事が分かる。
こういったデータから、積算温度をベースにして、キヌヒカリ/コシヒカリの出穂日予測をする事は可能であると思っているが、あきたこまちが例年通りに出穂しており、品種によっては温度の影響を受けにくいという事なのかも知れないという事で、特異な事情がある可能性をもう少し考える必要があると思う。また、出穂までの品種別積算温度を以下の表にまとめておく。年度ごとに、積算温度のブレがあるが、大まかな傾向は見て取れる。
❏ 品種別出穂積算温度(どんぐり農園調べ)
品種 | 2019年 | 2018年 | 2017年 |
---|---|---|---|
あきたこまち | 1550度前後 | 1650度前後 | 1520度前後 |
キヌヒカリ(通常) | 1750度前後 | 1700-1750度前後 | 1650度前後 |
キヌヒカリ(遅) | 1550度前後 | 1600度前後 | N/A |
コシヒカリ | 1750度前後 | 1670度前後 | N/A |
きぬむすめ | 1950〜2000度前後 | 2100度前後 | 1900度前後 |
興味深い点としては、キヌヒカリを6月上旬に田植した場合(上記表の「キヌヒカリ(通常)」と6月中下旬に田植した場合(同「キヌヒカリ(遅)」では出穂までの積算温度に150〜200度ほどの差が出る事が分かってる。つまり、6/10頃の田植えと6/20頃の田植では出穂がほぼ同じになる傾向があるという事だ。どのような理由でそうなるかは良く分からないが、お米は遅く植えても追いつくという事は、昔から農家で言われていた事だ。理由については不明としても、データとしてはっきりと分かっているので、田植えの遅れは収量、稲刈りに大きな影響が出ないという事を意味する。つまり、田植えを遅らせて、野菜の春作を引っ張る事で、通年での収益向上に有効な方法ではないかと思う。
但し、遅らせて追いつけるのは、6/20頃までで、それ以上遅れた場合は、秋作レタスの定植に影響する可能性があるのと、周辺の田んぼの水管理と大きくずれてしまう為、マイナスの面の方が大きくなると思われる。