アヒルと鴨のコインロッカー
作家:井上ひさし
発行年:2006
出版社:東京創元社
読み終えた日:2007/03/20
スター:★★★★☆
かっこいい。この本はその一言に尽きます。今風の小説で、なんというか、ドラマチックで躍動感があります。映画を見ているような気がして、どきどきしながら、一気に読めます。
伊坂さんの場合、文章力よりも、構成力・設定力に強みがあると思う。空間軸を利用したパラレル構成はよく見られますが、このような時間軸を利用したパラレル構成というのはすこし斬新で面白かった。
また、この物語の展開は主人公の視点で淡々と語られていくものの、実は物語のキーマンではなく、ナレーターのような第三者としての役割を担っている。この小説自体は非日常的なストーリーではあるわけだけれども、ある意味、非常に日常的な第三者の視点で物語が進んでいく事により、非日常的なストーリーにリアリズムを与えていると思う。この手法によって、作者は読者を物語に引きずり込むのに成功しているのだと思う。
ミステリーのようでもあり、青春小説のようでもあり、社会派のようでもある小説です。大変気に入りました。別の作品も読んでみたいです。