78万円という超低価格の農薬散布ドローンFlights-agが発売された。これまで100万円から250万円ぐらいだったので、この価格はかなりのインパクトだ。どんぐり農園では、ドローンの導入はしておらず、農薬散布はハツタ社の動噴を使っているが、値段としては同じぐらいで、路地野菜で使用出来るなら導入を検討出来る価格帯だと思う。ちなみに、かなりの数の農薬散布ドローンが発売されていて、下記のように農林水産省がリスト化している。
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/423catalog.pdf
2年ぐらい前から水稲へのテスト散布は見るようになっていて、課題はあるが、水稲、麦などでの実用化は間近だろうなと思っていた。ただ、現場から見た時の最大の欠点である「散布時間の短さ(10〜20分)は解決されない状態が続いている。これは、国交省が最大離陸重量25kg以上のドローンには、航空法施行規則附属書第1及び関連通達に準じた構造、強度及び性能等の基準に適合する事を求めている為だ。要は、フライトレコーダーの搭載や堅牢性など航空機レベルの性能が求められてしまうので、気軽に買えるものではなくなってしまう。
つまり、価格を抑えた手軽なドローンである為には、農薬含めて25kg以内にしなくてはならず、農薬を10Lとすると、機体とバッテリーで15kgとなり、大型のバッテリーを搭載する事が出来ず、飛行時間が伸びないという事になっている。農林水産省が普及を促している一方で、国交省は規制を厳しくしている。安全と利便性のジレンマがあるという事だろう。規制を少し緩めて欲しいところだが、25kg規制は変わらないようなので、バッテリーの性能向上を待つしか無い。
現在、水稲・麦への無人ヘリによる農薬散布は一般的で、空中散布に適した高濃度の農薬も豊富にある事から、大型のヘリに適さない場所ではダウンサイジングされたドローンに置き換わっていく事は十分に考えられる。ヘリとドローンの比較は以下のサイトが詳しい。
https://atcl-dsj.com/work/1429/
当地域(静岡県吉田町)の場合、冬季におけるレタス生産が主力となっており、これで使えなければ導入する決断は出来ないが、導入には下記の課題がある。
- レタスへの空中散布に適した高濃度散布が出来る農薬が無い
- 路地野菜の散布で葉裏まで散布出来るのか、或いは、浸透移行性でどうにかなるのか
- ビニール掛けた後の対応をどうするか
1.レタスへの空中散布に適した高濃度散布が出来る農薬が無い
2018年の現状でも空中散布は可能だが、通常の動噴用で1000〜4000倍希釈となっており、散布量が200-300Lになるので、現実的には散布出来る農薬はない。この課題は農薬メーカがコストを掛けて高濃度散布の登録をするかどうかに掛かっているが、規制改革推進に関する第4次答申により、登録コスト削減に向け、希釈倍数の追加の場合には、検査の一部省略を認める事になったので、そのうち、登録農薬が出てくる可能性があるので、期待したい。
2.路地野菜の散布で葉裏まで散布出来るのか、或いは、浸透移行性でどうにかなるのか
殺菌剤などの種類によっては、表面をコーディングするような感じで菌の侵入を防ぎ、病気を防いでいる予防系の農薬がある。こういった農薬の場合には、全体への散布、特に雨の跳ね返りで土が掛かるような地表近くにしっかりと散布したい場合も多い。恐らく、ドローンではこういった散布は難しく、治療系の少し強めの効果がある浸透移行性の農薬でないと効果が出ないのではないかと思っている(私の推測です)。もしそうだとすると、散布出来る農薬の種類が限られてきてしまい、複数の薬剤によるローテーション散布がしにくくなるという問題が発生するのではないかと思っている。
3.ビニール掛けた後の対応をどうするか
恐らく、3つ目が当地域、とういうか、保温が必要な冬作の野菜においての課題だ。露地野菜と言っても、農業用ビニールや不織布による保温は必要で、現状、農薬を掛ける際には、一度、ビニールを半開きにした上で、噴口を中に差し込みながら、散布している。対応農薬の課題をクリアしたとしても、このビニールを半開きにした状態での散布はどうやっても出来ないのではないかと思っている。
こういった状況を考慮すると、冬季レタス産地でのドローンによる農薬散布の普及はかなり難しいのではないかと思っている。水稲だけでも導入を検討してみる価値はあるが、30-40反程度なら50万円を切る価格まで下がるのを待ちたいところである。また、農薬散布以外のドローン活用も下記の通りに検討されているようだが、また、後日、見解をまとめたい。