5−7月頃になると、日本の河川沿いの土手に黄色い花、オオキンケイギクの群生をよく見かける。私が住んでいる焼津も例外ではなく、瀬戸川沿いをジョギングしていると、ちらほらとみられる。非常にきれいな花なのだが、環境省から特定外来生物と指定されており、除去されつつあるというのが現状のようだ。
オオキンケイギクが定着したのは、明治時代の1880年代頃で、観賞用として日本に入ってきた。北アメリカ原産の多年草で、乾燥した中でも育つ、非常に強い植物であり、その特性と花の美しさから、近年まで河川敷や法面の緑化に使われきた。しかしながら、その強さの為に、日本固有の生態系に重大な影響を与える可能性があるという事で特定外来生物に指定されたようだ。具体的な例としては、カワラナデシコなどが影響を受けているようだ。カワラナデシコは環境の変化に弱く、周りにオオキンケイギクなど高さがある花草が出来ると、陽当りが悪くなり、生育出来なくなるようだ。
強者が生き残るのは自然界の摂理なのかも知れないが、日本固有種のカワラナデシコが無くなってしまうというのは避けるべき事だと思う。学術的な話しで絶滅を避けるべきだという論理的な説明は可能だが、それよりも、「日本固有」という言葉からくるナショナリズムから保護する意識が強く働いて、オオキンケイギクを除去して、ナデシコを守るという風潮なのだと思う。
そうして考えると、最近、日本で議題になっているTPPの例外措置にしたいと日本政府が考えている日本の農業に対する保護政策も似たような心理から来るものなのかも知れない。もちろん、食料自給というのは、「イザ」という時に非常に重要なものとなるので、日本固有種の保存という事と同一に見るのは乱暴だというのは理解しているが、どうしても同じイメージを持つ。
それにしても、日本に入ってきた時には、観賞用として人々に喜ばれながらやってきたものが、わずか100年後には、有害植物として指定され、除去対象となる。オオキンケイギク自体は綺麗な花だと私は思う。時代と見る人によって、喜ばれたり、嫌われたりする。人間の正義というのは、それほど、移り変わりがあるという事だ。会社の経営もそうで、時代の流れにのる事もあって、成長が早い事もあるが、乗りそこねたり、逆風になると途端に難しくなる。経営に限らずだが、調子ぶっこかずに、リスク管理、基盤となる硬い事業を持っているかが経営の安定性に繋がる。
ちなみに、オオキンケイギクによく似た花として、ホソバハルシャギクというのがある。これは、根生葉(オオキンケイギク)か茎生葉(ホソバハルシャギク)か程度の違いしかないようで、見分けが困難だ。環境省のホームページに詳細がある。読んでも理解するのが難しいのだけども、参考までに。
環境省のページ
http://www.env.go.jp/nature/intro/4document/manual/index.html
さて、このホソバハルシャギク、学名をCoreopsis grandifloraと言って、和名はキンケイ菊なのだが、園芸用の流通名としては、キンケイギクと呼ばれる事が多く、本来のキンケイギク(Coreopsis basalis)と混乱が生じているようだ。キンケイギクは管状花基部が黄褐色の蛇の目をしているところが大きく違うのだが、流通の過程で、ホソバハルシャギクに名前を乗っとられたようだ。流通して広く認知が広まれば、そちらが本家となりかねない。本家を見ぬくには、自分自身の知識を磨くしかない、という事か。