作者:帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)
発行年:2004
出版社:講談社
読み終えた日:2007/10/03
スター:★★★★☆
帚木蓬生さんの作品は初めて読みました。お名前を知ったのも本屋で見て初めてしりました。
本屋で少し立ち読みをした時から、最初、しばらく読み始めるまで、ずっとドキュメンタリーだと思ってしまったぐらい、非常にリアリスティックのある小説です。
アフリカの南端の国で戦う日本人医師がエイズと戦うというストーリーですが、治療行為のみではなく、アフリカで非人道的とも言える治験の実態、政府による偽薬疑惑のある薬の公布など、アフリカの国が抱える社会的な問題にも目を向けた秀逸なストーリー展開がなされます。
また、作者自身が医者という事もあり、医学的な専門知識に加えて、恐らく、対象の国で相当の取材を行ったのではないかと感じられ、それらが、小説に深い真実味を与えているのだと思います。
ちなみに、読んでいて非常に気持ちが良かったのが、主人公のサクダ医師がとてもかっこいいという事、そして、全体に明るいトーンで展開されていくという事です。
サクダ医師が実在するわけではないのですが、日本人として、何だか誇りに思ってしまいます。海外で生きる自分としても、その国に愛される人間でありたいと思います。
非常に長い小説ですが、無駄な表現があるわけでなく、長いけれども凝縮した小説だと思います。最近の小説の中では非常にお勧め出来る一冊です。
ちょっとアフリカに行ってみたくなりました。